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ノルム空間の射影極限として書けない分離局所凸空間の例

ノルム空間の射影極限として書けない分離局所凸空間の例

概要

複数の文献に「任意の分離局所凸空間はノルム空間の射影極限として書ける」とあるのですが,その証明が回っていないような気がして,いろいろ考えていたら反例が作れたのでまとめました.

更新履歴

2020-08-27: 公開

2020-08-27: Twitterで p進大好きbot さんから次のような指摘を頂きました.ありがとうございます.(以下の文章は箱が解釈したもので,ご指摘いただいた文章そのままではありません.誤りがあれば箱の責任です.)

主張2の証明は次のように簡略化できる.Eがノルム空間の図式{F_λ}の逆極限として書けたとする.π_λ: E → F_λを構造射とする.するとF_λのノルムのπ_λによる引き戻しはE上の連続半ノルムだからKer π_λはEにおいて有限余次元であり,したがってIm π_λは有限次元,特に完備.したがって完備化の普遍性より,π_λ: E → Im π_λはπ’_λ: E’ → Im π_λ ⊆ F_λに一意に連続拡張できる(E’はEを真かつ稠密に含む局所凸空間ならなんでもよい.たとえば完備化をとればよい).拡張の一意性などからπ’_λたちが図式{F_λ}中の射とcompatibleであることがわかり,したがって逆極限の普遍性からπ’: E’ → Eを得る.ところがこれは包含写像E → E’の retraction であることが確かめられ,EはE’において閉ということになるが,これは矛盾.

この方法はより一般の圏でも有効であり,「逆極限でないことを示すには任意の図式を考える必要はなく,普遍的な図式のみを考えればよい」ということが適切な仮定(随伴関手定理の仮定)の下で成り立つということを表している.